バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード

1話1話がランダムに選ばれた50人の読者のもとに郵便によって届けられるという全く新しい発表方法がとられた「バイバイ、ブラックバード」の書籍化です。書籍化に伴い、新たに「第6話」が書き下ろされ追加されています。

そもそもこのお話は伊坂幸太郎のもとに出版社から「太宰治の未完の絶筆『グッドバイ』を完成させませんか?」と持ち込まれた企画が端を発しているらしいです。そうして伊坂幸太郎は、単に続きを書くのではなく、設定だけを借りたまったく新しい物語をつくってくれました。

それがこの「バイバイ、ブラックバード」。

新たに書き下ろされた第6話を加えた、連作短編集です。

5人の女性と同時進行で付き合っていた男が、ある事情から彼女たちと別れなくてはならなくなった。そして彼はそれぞれの彼女のもとを訪れ、別れの挨拶をしていく、というお話です。

上にも書いた通り、これは太宰治の「グッドバイ」における「10人以上の女性と付き合っていた男が、妻子と共に暮らす為に、彼女たちに別れの説得に訪れる」という設定を借りています。

しかし、「バイバイ、ブラックバード」と「グッドバイ」の主人公では、その「女性たちと別れなくてはならない」事情がまったく違います。

「グッドバイ」の主人公は、疎開させていた妻子と再び暮らす為に、絶世の美女を連れて、愛人たちのもとへ訪れます。それは絶世の美女が相手なら、愛人たちも素直に諦めてくれるだろう、という魂胆から。

しかし「バイバイ、ブラックバード」の主人公は、人として逃れることのできない宿命に取り込まれてしまったが為に、彼女たちと別れなくてはならない。そして、モンスター的な女性・繭美を連れて、彼女たちのもとを訪れていきます。

非常にですね、辛いです。「バイバイ、ブラックバード」の方が。「グッドバイ」の主人公は自分の為に、愛人たちと別れるのですが、「バイバイ、ブラックバード」はそうではありません。もちろん5人の女性と同時に付き合っている男になんぞ、まったく共感はできないのですが、それでも胸に迫るものがあります。

1話ごとに、主人公・星野一彦が別れなくてはならない女性が1人ずつ登場していき、それぞれの出会いのエピソードから、別れまでが描かれています。

各エピソードがとても伊坂幸太郎らしく、微笑ましい素材で彩られています。そしてとても温かいです。

悲しいのに、とても温かいのです。これは本当に、伊坂幸太郎の作品を通していつも思うことです。悲しみを底に湛えた上に、見事な彩りを加えさせるこの人は天才じゃなかろうか。

第5話と第6話は泣きました。本を読んで泣いたのは久しぶりだなあ。

本当に良い本に出会えたなあ、としみじみとした1冊でした。

あと下に紹介している「バイバイ、ブラックバードをより楽しむために」には伊坂幸太郎のロングインタビューと、太宰治の「グッドバイ」が収録されていますので、併せてどうぞって感じです。「グッドバイ」が未完なのが残念です。

あ、あと、もし仮にこの作品を映像化するなら、繭美は「ジャーマン+雨」の人でお願いします。読みながらあの女優さんが浮かんで仕方なかった。

「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために

「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために