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奇跡+UNKNOWN

奇跡(通常版) [DVD]

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両親の離婚で離ればなれになった小学生の兄弟が、それぞれの住む鹿児島と福岡から、九州新幹線の一番列車上り線と下り線がすれ違う瞬間願い事をすると奇跡が起きると言われる地、熊本へと向かうお話です。

是枝監督作品らしく、非常に綺麗な空気感と登場人物たちの日常が非常にナチュラルに描かれており、ワンシーン毎、丁寧に撮られている印象を受けました。

中でも主演の兄弟を演じたお笑いコンビ「まえだまえだ」の2人は秀逸。父親役のオダギリジョー、母親に大塚寧々、さらには祖父に橋爪功、祖母に樹木希林といった超豪華キャストにも負けずに子供の繊細さ、そして無邪気さを見事に見せてくれています。弟の旺志郎はとても可愛いですね。航基もお兄ちゃん特有の大人と少年が同居した繊細さを非常に素直に伝えてくれています。どちらも本当に素晴らしい。

「もう一度家族4人で暮らせますように。」

そんな切実な願いを込めたお兄ちゃんの懸命さと何処までも無邪気な弟の対比が非常に小気味よく物語を引っ張って行ってくれています。

他にもそれぞれの願いを持った兄弟それぞれの友人たちと共に一夜の冒険へと向かいます。

どんなに頭が良くても、どれだけ一所懸命でも、どうあがいても大人の生活に振り回されてしまう子供たちの小さな世界が、彼らの周りにいる失ったものを埋められない日常を過ごす大人たちの手から一度離れ、大きな大きな広がりを見せる脱出劇は観ているこちらの胸に迫ります。

周りの大人たちも本当に良い人たちなんですよ。中でも熊本で子供たちを泊めてあげる老夫婦にはぐっときました。本当に「2人とも良い人過ぎて振り込め詐欺にあわないか心配」してしまいます。オダギリジョーの軟なお父さんも良かったなあ。子供手当てのシーンは笑いました。

それぞれの日常を受け入れ、そこから一歩を踏み出す、とても優しい物語です。

是枝作品には子供が良く似合いますね。

すごく感動した映画でした。



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こちらはまったく優しくない物語。

エスター」の監督ジャウマ・コレット=セラの作品。

エスター」にかなり衝撃を受けましたのでこれも観ました。

植物学会の発表のために訪れたベルリンで車の事故に遭ってしまったハリス博士。なんとか一命を取り留め昏睡状態から4日ぶりに目を覚まし、共にベルリンへと来ていた妻の元へ駆けつけます。しかし妻はハリス博士を知らないと言う。そればかりか、妻の横には「自分こそがハリス博士だ」と名乗る人物が。

事故のショックで自分を見失い錯乱しているのか、自分の正気を失うハリス博士だが、彼の命を狙う殺し屋が現れたことでさらに事態が急変。一体自分は誰なのか?ハリス博士一世一代、自分探しの大冒険!

自分探しとか軽く書いちゃいましたけれど、この映画の中でハリス博士が味わうのは自己の喪失。自分の名前はもちろん、妻、そして仕事。自分を司るアイデンティティーの全て。そうなればもちろん自分の記憶すらも疑い始めちゃうんだから、こんな恐ろしい事はありません。

ここまで書いて気付いたけれどあれやね。「ボーン・アイデンティティー」と同じやねこの映画の設定。

んまあでも、「ボーン・アイデンティティー」は主人公が全くの記憶喪失から自己を探す物語なのに対してこの映画は自分の記憶はおぼろげながらも存在しているのに、周囲の人間たちから自分が消えているっていうね。そこが違うね。あと、この映画はハリス博士が「俺はハリスだ!」ってことを証明する為の映画では無くてですね。そこからもう一歩、あるんですな。どんでん返し。

そこに至るまで、つまりは観客に真実が曝されるまでにしっかりと伏線の回収もしてますし、しかもその真実の曝し方が非常にクール。「あ、ここでバラすんだ」ってなタイミング。さりげない。この映画のクライマックスは実はここじゃないんですな。

そんな風に幾重にも見所が積み重なった、非常に面白みのある映画だと思います。カーチェイスも迫力満点ですし、ブルーノ・ガンツフランク・ランジェラの2人芝居のシーンなんて緊迫感に満ちて最高でした。

あとこれ一応ハリウッド映画らしいんですけど、そんなこと分からないくらいにヨーロッパテイストに満ちています。「エスター」の雰囲気は色濃いです。

何の先入観も無しに観て、騙されて楽しめる映画だと思います。

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