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鍵泥棒のメソッド

全俺待望の内田けんじ監督最新作品「鍵泥棒のメソッド」観てきました。なんかもう安心して観れるわ。面白いに決まってるだろって感じで。ちなみに前作「アフタースクール」の感想はこちら

35歳にして定職にも就かず売れない役者として冴えない生活を送る自分の人生に嫌気がさした桜井、殺し屋として高額な報酬を受け取り金に困ることなくリッチな生活を送るコンドウ、ひょんなことからこの二人の人生が入れ替わってしまったことによって巻き起こる騒動を描いたサスペンスコメディです。

浪費癖があり何事にもなんかだらしない桜井と、生真面目で几帳面そして努力家であるコンドウが入れ替わることにより、桜井によるなんかだらしない殺し屋と、コンドウの几帳面で努力家の中年役者志望が誕生し、これまでのそれぞれの生活がガラリと色を変え、それぞれ個人の特色が現れた生活になって行く様がとても面白かったです。特にコンドウはもう・・・。とても怠惰な桜井による人生だったものが生真面目なコンドウがその生活を送ることによってみるみる改善されていく。役者としても受けが良く、アルバイトも真面目に頑張り、礼儀正しく、そして彼と結婚したいと言う女性まで現れる。

環境とはその人生を送るその人が作るものなんだと、気付かされました。

銭湯で石鹸で滑って転んじゃって頭を強く打ったショックで記憶を失ってしまい、その隙に桜井によってそれまでの殺し屋として金に困らない人生を取り上げられた挙句、自分をどうしようもないどん底の生活を送る人生の敗北者であると信じたコンドウ、それでもその中からなんとか立て直そうと懸命に努力し、その生活を助けてくれる女性と出会い、なんか丸ごと人生が救われていく様はとても感動的で胸が温かくなりました。

それに引き換え桜井の適当っぷりは凄かったです。几帳面で生真面目、とても細やかな仕事が可能な殺し屋コンドウの名前が汚されちゃう。なんか知らんけど恥ずかしくなった。俺か!と。でもこの桜井、堺雅人が演じてるんですけど、似合いますね〜こういう男前なんだけど情けなくて駄目な男。

対するコンドウは香川照之。記憶を失う前、殺し屋としての彼はとても殺気立って目つきも怖く無機質な感じが凄くしてましたが、桜井として売れない役者としてド貧乏な生活を送る彼はとても温かくて優しく、そして生来の生真面目さが前面に押し出されてます。つねにシャツはジーンズの中にイン。なんだかとても可愛い。広末涼子演じるヒロインが惚れるのは充分に分かります。

愛する人と共にする人生の温かみを知ったコンドウ、その彼が記憶を取り戻した時、桜井に対して口にする「俺がお前を助けてやる。その代わりお前の人生俺が貰うぞ」はなんだか感動しました。

例えお金が無くても仕事が無くても、愛する人と共にがんばれる人生は多分、何物にも代え難いし、もしかすると手に入れにくいものなのかもしれない。だからこそこの人だと思える人が居るなら、その人を大切にしなくちゃいけない。

物に溢れ、金で買えないものは無いとさえ言われる今の世の中で、人生を送るうえでとても大切なものを映したハッピーな映画です。

これまでの内田けんじ作品に比べると「やられた!」感は確かに無いですけれど、笑いどころは満載ですし、何より観終わった後のほっこり感はこれまでに無いほどだと思います。

落ち込んだ時とか観ると良いかもしれないですね。

すごく楽しい時間でした。是非。

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