アナーキー・イン・ザ・1R

映画や音楽や読書、1ルームで楽しく生きる

映画紹介「バイス」

こんにちは。

連日の映画紹介でございます。

今回は「バイス」。日本公開は2019年と比較的新しい作品ですね。

タイトルの「バイス」は「副」という意味で、今作はジョージ・W・ブッシュ政権下のアメリカでバイス・プレジデント、つまり副大統領を務めたディック・チェイニーにスポットを当てた作品です。

2001年の9月11日に起きたアメリ同時多発テロ以降のイラク侵攻を指揮するなど、それまでただのお飾りとされてきた「副大統領」というポストながら、お飾りをブッシュ大統領に譲りほとんどの権力を掌握し、アメリカを自在に操った影の大統領。世界の情勢を変え「史上最強の副大統領」としても「史上最悪の副大統領」としても名を残す人物です。

このチェイニーが如何にこのポストまで昇りつめたのかを、この「バイス」では彼の青年期から丁寧に描き出していきます。田舎町の電気工から上昇志向の強い女性と結婚し、半ば彼女に導かれるように政界へと進出し、その後はただ権力を求め続けた結果、アメリカを、そして世界を動かすポストに就くまで。

ちなみに彼はアメリカ大手の石油会社のCEOも務めていた時期があり、イラク戦争後の復興事業でこの会社は巨大な利益を得たとされています。そしてこのイラク侵攻の指揮を執ったのがチェイニーですからもうすごい黒いよね。そこもしっかり描かれています。

ただ、この映画はそんなチェイニーを糾弾する映画ではありません。どちらかと言えばブラックコメディです。

もしかすると観客はチェイニーの人間性に惹かれさえするかもしれません。寡黙で家族思いで良き父であろうとする人物です。しかしそんな人間でさえ平気で嘘を吐き、民主主義を壊し、多くの命を犠牲にすることを厭わず、ひたすら己の利益のために動くのです。巨大な権力を手に入れた人間を、そしてその権力と言う刀の振るい方を間違えた人間を、そして結果としてもたらされる悲劇を、バカバカしく描き出しています。この権力に呑まれた人間に「NO」を突きつけることは簡単ですが、誰しもが巨大な権力を手に入れたら間違いを犯す可能性はある訳です。

また、チェイニーをはじめ、ジョージ・W・ブッシュ、ドナルド・ラムズフェルトら登場する政治家は存命の方ばかり。この映画観たのかな?観たとしたらどんな気持ちでこの映画観たんだろう?近代政治をこうもネタにした映画を作れるアメリカってすげえなって思いました。

そしてチェイニーを演じたのはやり過ぎの役作りに定評のあるクリスチャン・ベール。「マシニスト」では餓死寸前かよというまで痩せこけ映画ファンをドン引きさせた男です。この「バイス」においては描かれるチェイニーの20代から70代までを一人で演じ切っています。特殊メイクもあるのでしょうが、僕は途中までこの俳優がクリスチャン・ベールだと気付きませんでした。今度は太り過ぎやねん。全然わからんかった。なんでもこの作品の撮影期間で20kgの体重の増減をしていたそうで髪も剃り上げてカツラはしていなかったそう。またしてもストイックが過ぎる役作りをされておりました。

他に注目はジョージ・W・ブッシュです。アメリカ大統領の中でも歴代支持率ワースト1位を記録した「史上最低の大統領」を演じたのはサム・ロックウェル。激似です。笑えるくらい似てます。というか笑えます。

こんなふうにすごく政治的なものを扱っている映画なのに、政治映画とも批判映画ともなっておらずにフラットな視点で観れる作品です。誰かを悪だと決めつけて撮影された映画ではないんだと思います。

アメリカを戦争へと導いた男、そして模範的な家庭人であろうとした男、どちらも同一人物です。それが人間。すごく面白い映画でした。

最後にこの「VICE」。悪という意味もあるそうです。

またこの作品の監督アダム・マッケイと主演クリスチャン・ベールのコンビは2016年の「マネーショート」から始まっているそうですので、そちらも観たいと思っています。

それにしてもクリスチャン・ベールの体が心配。痩せすぎたり太りすぎたり、大丈夫なのかしら・・・。

 


バイス (字幕版)

Amazon Prime Videoでは新作のためレンタルは500円です。

 

それでは、また。

Copyright ©アナーキー・イン・ザ・1R All rights reserved.